【書評】『死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33』
今回読んだ本は『死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33』。
著者はターミナルケア・終末医療専門医の大津秀一さん。その仕事柄、人の死をたくさんみてきた人。別の意味で、送り人な人です。
そんな著者がターミナルケアの専門医として「人は死ぬ直前に何を思い、何を大切だと考えたのか」をまとめた本が『死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33』になります。
ちなみに、世間で話題になったのは、こちららしいです。
人が死の直前に
大切だと感じたこと
人が死の直前に
心から後悔したこと
どちらも大変興味深いテーマですね。
今の日本は、アフリカや戦争中の日本に較べて、人の「死」を肌で感じる体験がものすごく少ないと思います。
命の安全が保証されているということなので、いいことっちゃいいことなんですけど。
一方で、「死」を肌で感じる体験が少ないと、「死」について考える機会がほとんどなくなります。
そんななかで、「死」についてリアルな現場を教えてくれるのが本書です。
世の中は不確実なことだらけだけれども、「死」だけは誰にとっても確実で、しかも恐怖感を伴います。
しかも、現代の日本のように生きることが当たり前の世界では、「死」のクオリティが重視されるようになりました。
つまり、「死」について求めるべきことが増えました。もはや、ただ死ぬだけでは我々は満足できなくなってきたのかもしれません。
- 自分は一体何をなしてきたのか?
- 自分の生きる意味はなんだったのか?
- 自分は生きていて幸せだったのか?
人は死について「価値」の有無を求め始めました。であるならば、「死」について一度は考えておくべきなんじゃないかなと思います。
この本の構成と心に残ったエピソード
この本は、著者が実際に交流してきた患者との会話をつづるという構成です。
患者の台詞もあるので、とても臨場感のある語りとなっており、割りとすぐ泣く私は泣きながら読むところもありました。
私は親でもないし、もっというと結婚すらしていないのですが、一番号泣した話は、ガンになってもうすぐ死ぬであろう母親が、3歳というまだ幼い我が子に、自分がもうすぐ死ぬことを伝えるべきかという話です。
最終的に、このお話にでてくる母親は、自分の死を伝えるという選択をします。
この選択、できます?
そして、きちんと伝えられます?
自分のこどもに、自分がいなくなるってことを。本当はそんなこと伝えたくない。でも伝えなきゃいけない。
想像しただけでも、胸に痛みが走ります。
自分が母親の立場だったら?
自分がこどもの立場だったら?
母親になる人もそうでない人も、自分に大切な人がいた場合、いずれこういう機会がくるかもしれません。
そのとき、前向きに自分の死を伝えることができるのか?
考えさせられる話でした。
私は、母親の立場でも、こどもの立場でも、伝えたいし、伝えてほしいと思いますけど。
事実を隠される・嘘をつかれるというのは、私の価値観では許せません。
私のことを思っているからこそ真実を伝えるのであり、あなたのためを思うからこそ真実を伝えるのが、本当に相手を思いやることだと思うからです。
あなたならどうしますか??
そのほか印象に残った章…夫婦の役割を放つ
この章も個人的に印象に残りました。
こどもが生まれてからすれ違い続けてきたある夫婦。あるとき、夫のほうが、ガンになってしまいました。そんなとき夫は言います。
「先生、私は何で結婚したのでしょう?」
夫は「妻がわからない」と言います。一方で妻は「夫がわからない」と思っています。
この二人は、最終的には、この執筆者が仲立ちをしたことで、「最後だけでもちゃんと夫婦しよう」とお互い深い愛?でつながります。
私ね、この話を読んで思ったんですよ。
こんな最後だけは絶対嫌だって。(この夫婦には申し訳ないですが…)
いや前向きに読めば、「死」が二人の愛を復活させたとか、「死」がふたりをつなげた、とかとれるかもしれません。
でも、「死」に直面しないと、「愛」が取り戻せなかったって悲しすぎませんか??
なんでもっと生きてるうちに歩み寄らなかったの?
病気にならなかったら、ずっーとそのままの生活を続ける気だったの?
いや、分かるんです。
コミュニケーションをとりたくてもなにからとっていいのかもはや分からない。
関係を改善したくてもどうしたらいいのか分からない。
私もそうです。
でも、死ぬ直前にならないと、コミュニケーションがとれない、愛を実感できないなんて、悲しいなって思ったんです。
そして、こうならないためにもっと今もっとやれることがある!
そう思わせてくれるお話でした。
「死」について考えたい人は読む価値アリの本
この本は、「死」について考えたいなら読んでおいて損はないかな、と思いました。
『死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33』というタイトルの通り、この本では生きる上で大切なことを、教訓として紹介してくれます。
ただ、注意したいのはこれらの教訓自体は、結構ありふれたものも多いです。
例えば、
- SNSの呪縛から逃れる
- 仕事に固執しすぎない
- お金の呪縛から逃れる
など。
決して、死の直前にならないと気づかないことが書かれているわけではありません。
それでも私が読む価値があると言ったのは、実際に死にゆく人々が何を思い、死の直前に何に悩むのかというリアルな姿をみられるからです。
あー人って死に直面するとこんな感じになるんだな、っていうのが分かります。
ひとついえるのは、皆自分の人生を振り返り、自分のこれまでの人生について評価をするということ。
どんな人であれ、自分の人生の価値について意味を見いだそうとしています。
やはり、人は生きている意味、自分の価値というものを追い求める業なのでしょうか。
価値とか意味とか、何が正しくて正しくないのかとか、私にはまだよくわかりません。
でも、自分が生きていたということが無駄で終わってほしくない。
そういう思いをみな抱えていた気がしますね。
おわりに
というわけで、死について考えたい人はマストリードでしょうか。
この本を読んで後悔しないのは、死んでいった先輩たちの姿を通して死について自分で考えたい人です。
逆に、○○は大切であるという教訓を得たい人はがっかりするかもしれません。なぜなら、死にゆく人々が大切だと語る価値観はすでにありふれたものが多いからです。死にゆく人々にしか到達することができない価値観があるのではないか?と期待すると、肩すかしをくらいます。
死にゆく人々は、世の中で大切だと言われていたことを死を目の前にして、改めて自分にとってそれは本当に大切だったと実感している、ということ話が大半なので。
おわり
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