死刑がテーマの漫画『モリのアサガオ』について~死刑制度と死刑囚、死刑執行について考えさせられる漫画

2019年5月18日私の読書リスト


昨年末、死刑が執行されてニュースになっていましたよね。

そのニュースを見てから、 モリのアサガオという死刑がテーマの漫画を読みました。
最初は絵が独特でとっつきにくいなぁと思っていましたが、いざ読んでみると結構面白かった(というか考えさせられた)ので、

振り返りもこめてまとめと感想を書きます。

1 モリのアサガオのあらすじ

新人刑務官である及川直樹は、死刑囚舎房に配属される。そこにいた死刑囚達は、深く反省している者や無気力な者、自らの罪を罪と思わない者など様々だった。
そんな彼らと接していく中で、直樹は死刑制度の是非について深く考えるようになる。
(Wikipediaより)

物語は、主人公の及川くんが刑務官として配属された1日目から始まります。

及川くんは、はじめ“死刑囚”という異質な人間たちにビクビクしっぱなしです。
でも、死刑囚たちが反省もせず、自由奔放に暮らしているのを目の当たりにして、死刑囚のことを軽蔑するようになります。

そして、1日目にして、死刑囚にあげるはずの「大福」を奪い、自分で食べるという行動をとり、死刑囚を泣かせてしまうのです!


しかし、及川くんは

「明日死ぬかも知れない人が大好きな大福を奪われたらどんな気持ちなんやろう。僕はなんて酷いことをしてもうたんや!!」

と自らの行動を深く反省しました。

そして、その翌日死刑囚のために改めて大福を買っていってあげることにしたのです。。。


しかし、そこにはもう大福を欲しがった死刑囚はいませんでした。
及川くんが大福を届ける前に、死刑が執行されてしまっていたのです。


及川くんは、大福をあげなかったことへの後悔、昨日までそこにいた人間が急にいなくなる現実を目の当たりにし、打ちのめされます。



しかし一方で、

“人を殺したことに関して罪の意識ももたず、好きなものを食べ好きなことをして自由奔放に生きる死刑囚たちに反省してほしい"

という思いも強くなっていくのでした。。。


そんな中、及川くんの拘置所に、かつての同級生であり、野球選手としても人としても憧れていた

゛渡瀬満゛

という男が死刑囚としてやってきます。

及川くんは、“憧れの渡瀬くん”、そして他の死刑囚たちと交流を深め、刑務官という仕事をしていく中で、

死刑制度はなんのためにあるんや
死刑囚ってどういう人間なんや
死刑囚にとって死とはどんな意味を持つんや
刑務官という仕事はいったいなんなんや



と、”死刑“に関するさまざまなことに疑問を持ち、答えを探しはじめます。


あらすじが長くなりましたが、
この漫画は全八巻と短いですが、内容はとても濃いです。

何度も繰り返し読むことでより深く味わえる、そんなタイプの漫画です。



及川くんがどのような答えをだすのかは、是非漫画で自分の目で確かめてください。

次は、ネタバレもほどほどに、私の思うこの漫画の魅力について紹介します。

モリのアサガオの魅力①死刑囚と死刑制度について学べる

モリのアサガオでは、死刑囚の日常・死刑執行の様子などが緻密に描かれています。

・死刑執行は必ず午前中(9時~10時)に行われる
・執行に立ち会った刑務官はその日の午後は休みとなり、刑の執行から2日間の特別休暇がもらえる
・「妻子に妊婦がいる者」「入院中の家族がいる者」「家族に結婚予定者がいる者」「喪中などの事情がある者」は、死刑執行の担当からはずされる
・死刑執行は誰が殺したか分からないよう、複数でボタンを押す



といった、死刑にまつわるマメ知識に加えて、

・死刑宣告から死刑執行、その後の遺体処理の流れ
・刑務官という仕事



などを知ることができます。

普通に生活していては決して知ることのない知識や仕事を垣間見ることができますので、非日常を味わいたい人にオススメです。

モリのアサガオの魅力②死刑に関する様々な価値観


モリのアサガオには、新人刑務官の及川くん以外にも、様々な価値観を持つ刑務官が登場します。



①「復讐の連鎖を断ち切るためにも死刑は必要」と考える死刑肯定派の刑務官
②「長い時間をかけて改心した人間を殺してしまうことははたして正しいといえるのか」と考える死刑否定派の刑務官
③「刑務官は死刑囚の身の回りの世話をしたり話相手になったりするサービス業」と割り切る刑務官


この漫画は「死刑はダメ、ゼッタイ。」といった価値観の押しつけをしたいわけありません。
色々な価値観がある中、自分はどう思うのかということが重視されています。


私が個人的に一番ハッとさせられたのは、
「死刑囚はどのようにあるべきか、どのような気持ちで死ぬべきか」 という問題です。

こんなこというとあれですが、
私は特段死刑制度に反対ではありませんでした。


だって、人を殺した人間がそこら辺にいたり、自分の隣の部屋にいたらやっぱり怖いじゃないですか??安心して暮らせないじゃないですか??
それに死刑制度が廃止になって無期刑が増えても国の財政を圧迫するかもしれないし、“社会”の安全のためにも、死刑はあってもよいんじゃないかとも思っていました。


いわば、社会にとって死刑制度はどのような意味を持つかという視点からのみ物事を考えていたのです。

でも、この漫画は、”社会と死刑制度の関係“から死刑制度を捉えていません。
死刑制度を、死刑囚の側から考えるのです。

「死刑制度は、死刑囚にとってどのような意味をもつのか」

主人公の及川くんは、その答えを見つけます。及川くんの見つけた答えは私も非常に共感できました。


あまり語りすぎるとネタバレになってしまうのでここら辺でやめときますが、とにかくこの漫画を読んで、色々考えさせられたのでした。

私もまだまだ読み足りない部分があるので、何度も繰り返し読んで行きたいと思います。


以上、「死刑がテーマの漫画『モリのアサガオ』について~死刑制度と死刑囚、死刑執行について考えさせられる漫画」でした。